海外で暮らすご家族にとって、日本で過ごす年末年始は格別な楽しみではないでしょうか。しかし常夏の国から急に真冬の日本に帰ると気温差も大きいため、体調を崩すお子さんも多いようです。特に入学試験を受けるために帰国する受験生にとっては、切実な問題です。
そこで今回Springでは、冬の一時帰国や受験帰国の際の健康管理について、専門家に伺いました。
ラッフルズジャパニーズクリニック 医師 林 啓一先生
Q. インフルエンザの予防接種は、シンガポールで打っておいた方が良いでしょうか。
S. インフルエンザの予防接種は、接種してから効果が出るまで2週間ほどかかりますから、余裕を持って打っておくことをおすすめしています。ワクチンの型は北半球ではほとんど共通で、シンガポールも日本と同じ種類のワクチンです。両政府とも、6ヵ月から6歳までの小児や妊婦さん、高齢者などには年に1回の接種を推奨しています。
インフルエンザワクチンが感染を予防できる確率は50%程度ですので、接種していてもかかってしまう場合もあります。ただしワクチンには、「感染した場合も重症化することを予防する」という効果もありますから、いずれにしても接種する方が良いでしょう。
Q.ワクチン接種以外に効果的な予防法は?
S.?一番大事なことは、抵抗力を下げないことです。そのためには「しっかり睡眠をとること」「バランスの良い食事をとること」「適度な運動をすること」です。また、「水分補給」は風邪の予防だけでなく症状を緩和するためにも有効です。
◆ 休み中も睡眠サイクルを乱さないように
幸いシンガポールと日本では時差があまりないので、時差ボケなどで睡眠サイクルが乱れることはありませんが、学校がお休みの期間だからといって夜ふかしや朝寝坊をすることは最小限にしましょう。週末や連休でも、普段の起床時刻から1時間以上ずらさないことが大事です。
受験生の皆さんは夜遅くまで勉強する癖がつきがちかもしれませんが、体と脳の発達には夜10時から午前2時の間に深い睡眠が必要です。また、睡眠時間の長さについては、年齢層別に以下のように推奨されています。
? | 3~5歳 | 6~13歳 | 14~17歳 |
推奨される睡眠時間 | 10~12時間 | 9~11時間 | 8~10時間 |
最低でも… | 8時間 | 7時間 | 7時間 |
最長…これ以上は長すぎ | 14時間 | 12時間 | 11時間 |
これまでの研究により、寝る前にPCやスマホの画面などを見ると寝付きや睡眠の質が悪くなることも分かっています。家庭でルールを決めたり、スクリーンタイムの設定をすることでしっかり睡眠がとれるように工夫しましょう。
大人の皆さんも睡眠は大切です。「睡眠時間が6時間未満の人は7時間以上の人より4倍以上風邪を引きやすい」という研究結果も出ています。お子さんの看病で寝不足になってお母さんがインフルエンザをもらってしまう、あるいは逆に風邪を引いた親御さんがお子さんにうつしてしまう、ということは非常によくあります。家族全員で予防を心がけてほしいと思います。
◆ 意識して水分補給を
ウイルスが体内に侵入しても、通常は口や鼻、のどの内壁の粘液が異物をとらえて感染から体を守ってくれます。しかし空気が乾燥して水分が不足すると、この防御機能が低下してウイルスに感染しやすくなります。冬は乾燥が厳しい上に、暑い夏と違って意識しないと水分補給を忘れがちです。飛行機の機内や冬の一時帰国中は、水分を摂れるように手元に常備し、お子さんに声をかけて水分補給を促しましょう。
お子さんの体格や運動量にもよりますが、小学生までは1日1~1.5リットル、中学生以上は1日2リットルを目安に、できれば間を30分あけずにこまめに飲むことが推奨されています。ただし、水分でもジュースは糖分を多く含んでおり、また緑茶、紅茶、コーヒー、烏龍茶などはカフェインを含んでいるので、子どもにはあまりおすすめしません。飲み物の種類には気をつけてあげましょう。
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