今年2月、シンガポール日本人学校中学部では、「グローバル時代に必要な論理的思考力」というテーマで講演会が行われました。講師は多くの著書が中高生から絶大な支持を得ている「現代文のカリスマ」出口汪先生です。自ら開発した論理的思考の教材「論理エンジン」は、全国200以上の公立・私立校を中心に採用されており、今年度開講の同校グローバルクラス国際教養ゼミでも導入が予定されています。
講演に際して校長の齊慶先生は、「受験だけが目的ではなく、これからどう学んでいくか、人生をどう生きるか、そのために今日の講演を生かしてほしい」と生徒たちに語りました。
出口汪先生 講演抜粋
■ 変わりゆく「必要とされる学力」
今、日本は戦後最大の教育改革に迫られています。実際に2020年には大学入試でセンター試験が廃止され、受験問題の傾向も大きく変わろうとしています。これまでの試験では、いかに多くのことを記憶し、より迅速に正確に計算できるかが試されてきました。しかし、現代ではインターネットの普及により誰もがすぐに検索でき、計算も機機が瞬時にしてくれます。記憶すべきは「一生使う知識」のみで、それ以外の細かい知識はその都度調べれば良い時代なのです。つまり世の中で「必要とされる学力」は、明らかに昔と変わってきました。君たちは今まさに、社会全体そして教育の過渡期に直面しているのです。
■ 「論理」とは物事の「筋道」である
同年齢の友人や家族などは感覚だけで分かり合える仲間であり、理解に困ることはあまりありません。ところが、毎日読んでいる新聞や教科書、試験問題の文章などは、不特定多数の人に理解してもらえるように 書いたものですから、そこに感覚は通用しません。そのため必ず「筋道」を立てて書く必要があります。それが「論理」なのです。
「論理」を身につければ
話し方が変わる(=筋の通った話ができる)
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みんなが理解してくれる(=人間関係が円滑になる)
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コミュニケーションの仕方が変わる
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周囲の人が評価してくれる ←あの人の話は分かり易い
効果:
- 何か問題があった時にも、論理的に話し合いができる
- 友だちや家族だけでなく、大学や社会に出た時にもスムーズな人間関係が築ける
- 文章の読み方が変わり、筆者の論点を早く正確につかみ取ることができる→英語・数学・理科・社会あらゆる教科にも役立つ
つまり「論理」が身につけば、グローバル社会で出会う人種・文化・背景の異なった「圧倒的な他者」とも誤解が生じないように理解し合えるようになる
出口先生より
この10年で、通信手段は大きく変わりました。かつては特定の相手に手書きで書かれていたものが、メールやブログ、ツイッターなど、電子データとして書かれるようになり、その情報は、瞬時に世界中の不特定多数の人に拡散していきます。つまり、そこに感覚は通用しないため、論理的に書く必要があるのです。
グローバルに活躍できる人とは、他者を受容する能力がある人で、当然、「論理」がコミュニケーション手段として必要になります。英語が話せても論理的に話せなければ意味がありません。日本語で論理的に思考できる子どもたちが日本に戻って活躍してくれることが非常に楽しみです。
講演を終えて

講演後、生徒会長の多橋夏樹さんは、「これからの時代、論理力がいかに大切であるか理解できました。筋道を立てて考えることをこれから意識したいと思います」と挨拶し、会場は割れんばかりの拍手に包まれました。
出口先生は「私にとっても初めての海外での講演。海外で育つ子どもたちの言葉や論理力は、以前からずっと気になっていました。子どもたちに最強の国語教育を提供し、日本人としての学びが一層有意義になるよう応援したい」と力強いエールを贈られました。