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<特別企画> コロナ禍を振り返って ~子どもたちに与えた影響~【後編】

コロナ禍を振り返って
~子どもたちに与えた影響~【後編】
Looking back on the Covid-19 pandemic

現在、日本では新型コロナウイルスの感染者が再び増加し、第8波への警戒が続いています。その一方で「ウィズコロナ」の社会として、コロナと共存しながら新たな生活様式のもとで日常生活を取り戻しています。私たちにとって、コロナ禍が未曾有の経験であったからこそ、お子さまが受けた影響を知り、受け止めることが大切だと考えます。
Springでは、前号に続き「コロナ禍が子どもたちに与えた影響」について特集しています。小学校から高校までのお子さまについて、特に学業や学校生活でどのような影響があったのでしょうか。シンガポール日本人学校3校、及び日本の学校の先生 にお話を伺いました。

<特別企画> コロナ禍を振り返って ~子どもたちに与えた影響~【後編】 人気のない成田国際空港

取材協力(50音順・アルファベット順)
【小学校】
● アオバジャパン・インターナショナルスクール(東京都)
● シンガポール日本人学校 小学部クレメンティ校 
● シンガポール日本人学校 小学部チャンギ校
【中学校・高等学校】
● アオバジャパン・インターナショナルスクール(東京都)
● 大妻中野中学校・高等学校(東京都)
● 関東学院六浦中学校・高等学校(神奈川県)
● シンガポール日本人学校 中学部

日本の新規感染者数推移

<特別企画> コロナ禍を振り返って ~子どもたちに与えた影響~【後編】

コロナ禍での日本の主なできごと

※外務省、厚生労働省の発表をもとにSpring編集部が作成

<特別企画> コロナ禍を振り返って ~子どもたちに与えた影響~【後編】

Springが小学校・中学校・高校の先生に伺いました

◆「学びの継続」のために工夫したことは?◆

<小学校>

オンライン学習を通じて、今まで人前で話すことに自信がなかった生徒が多くの質問をしたり、オンライン環境を上手く使い効果的にコミュニケーションをとれるようになるなど、生徒の新たな強みを確認することができた。
(アオバジャパン・インターナショナルスクール)
オンライン授業を実施。オンラインに適した教材を研究し、スライドや動画を作成した。 宿題は Googleクラスルームより提示した。
保護者との情報交換(オンラインによる学級懇談会、個人懇談会、授業参観など)を実施した。
(日本人学校 小学部クレメンティ校)
速やかにオンライン授業に移行。音楽や体育の授業では簡単な運動やリコーダー演奏などを取り入れ、飽きない授業作りを行った。
在宅学習期間中も通常の6時間授業をオンラインで実施。Googleクラスルームを利用し、課題を適宜与えながら授業後の学習保障も行った。
(日本人学校 小学部チャンギ校)

<中学校・高等学校>

対面学習からオンライン学習へスムーズに移行し、バーチャルで授業にアクセス。チームベースでの学習は、オンライン学習でも有益と感じた。
(アオバジャパン・インターナショナルスクール)
生徒全員がChromebookを所有していたため、オンライン授業に対応可能。Google Workspace for Educationのシステムで切り替えもス ムーズに。
(関東学院六浦中学校・高等学校)
全生徒がタブレット端末によるオンライン授業・学習に慣れていたため「学びの継続」に問題はなかった。学習量に負担を感じないよう、復習時間の確保を重視したが正解だった。
(大妻中野中学校・高等学校)
オンライン学習を実施。授業動画を配信したり、Googleクラスルームを活用し、授業後に「質問コーナー」を設けるなど、一人ひとりにきめ細かい対応を行った。
グローバルクラスでは、タイやミャンマー、香港や中国、シンガポールや日本の学校とオンラインで文化交流を行った。
(シンガポール日本人学校中学部)
 

◆課外活動や校外学習、留学プログラムはどう実施?◆

<小学校>

物理的なフィールドトリップ(遠足)や社会科見学の代わりに、バーチャルなフィールドトリップを実施。見学先のスタッフに子どもたちがオンラインでインタビューも行った。 (アオバジャパン・インターナショナルスクール)
修学旅行、社会見学などは中止したが、現地校との交流はオンラインで可能な限り実施した。
(日本人学校 小学部クレメンティ校)

<中学校・高等学校>

オンラインに代替はしたが、外部とつながり続けることを意識し諦めず実施。21年度は、オンラインとリアルとのハイブリッド型を取り入れ、新たな学習スタイルを創造。22年には、「カナダ短期研修(中2希望者)」を実施。
(大妻中野中学校・高等学校)
宿泊を伴う研修は実施出来ず、バーチャルツアーをオンラインで実施。21年秋にはカナダへ留学、22年にはドバイへの語学研修を実施。
(関東学院六浦中学校・高等学校)
部活動は、接触が禁じられたため全面的に休止した。
課外活動として、大学に訪問し「昆虫」を使った研究体験をしているが、コロナ禍は訪問がかなわなかった。代わりに「昆虫」や実験機材を送ってもらい、研究の流れや実験方法を習得することができた。
(シンガポール日本人学校中学部)

◆ボランティア活動はどう実施?◆

<中学校・高等学校>

国際バカロレア教育(IB)では、監督者がその経験を正当なものと判断できる範囲内でCAS活動の提出が許可されているためオンラインで生徒が他の生徒を指導したり、自分の居住地域周辺のコミュニティサービス(奉仕活動)に個人的に取り組んだ。
(アオバジャパン・インターナショナルスクール)
国内大企業・大学・海外提携校との連携プログラムに多くの生徒が参加。SDGs への取り組みを土台にしたものが多くオンラインでも「ボランティア活動」と結びつけ継続。
(大妻中野中学校・高等学校)
感染で苦しんでいる人や、最前線で闘っている医療従事者の方の心が少しでも癒されるよう、千羽鶴を折ってお送りした。コロナ禍でも可能なボランティア活動を模索して継続。
(関東学院六浦中学校・高等学校)
コロナ禍にグローバルクラスの有志で結成したボランティア団体があり、毎週日曜日にイーストコーストパークの海岸沿いをゴミ拾い掃除している。ソーシャルディスタンスを意識しながら活動に取り組んでいた。
(シンガポール日本人学校中学部)

<特別企画> コロナ禍を振り返って ~子どもたちに与えた影響~【後編】

<特別企画> コロナ禍を振り返って ~子どもたちに与えた影響~【後編】 画像提供:大妻中野中学校・高等学校

◆寮生にはどのように対応?◆

<中学校・高等学校>

本校の寮は一人一部屋の個室のため、感染した寮生が出た場合には、食事は部屋食に切り替えて、使用するシャワーやトイレを限定するなどして対応。
(関東学院六浦中学校・高等学校)

◆コロナ禍の生活は身体面、情緒面にどのような影響を及ぼしたと考えますか?◆

<小学校>

児童・生徒は重要な発達段階にあるため、持続的なオンライン学習により社会的、感情的な影響が見られる。
授業再開後、学校生活への適応や対面での友だち作り、対面で起こる問題解決やコミュニケーションの取り方などに対し、以前よりも時間がかかっているようだ。
(アオバジャパン・インターナショナルスクール)
マスク着用やソーシャルディスタンスによる、人との関わり方(会話の音量、適切な距離感など)は影響があったと思われる。
運動面で、在宅学習などによる体力低下が考えられる。
(日本人学校 小学部クレメンティ校)
大勢で遊ぶ経験ができなかったため、遊べるようになったすぐの頃は、友だち同士のトラブルや怪我があり、指導の機会や保健室の利用が増加。
(日本人学校 小学部チャンギ校)
 

<中学校・高等学校>

社会性を維持できた生徒がいる一方で、キャンパスに戻ると同級生との会話や遊びの再開に苦労している生徒も見られる。
一部の生徒には健康面、身体面、社会面で顕著な影響も。
(アオバジャパン・インターナショナルスクール)
今後身体的・心理的・情緒的・運動能力でプラス面とマイナス面の影響が出てくると想像している。それに備え、専属カウンセラー、学年担当団、養護教諭、生徒部を中心に、情報交換会を定期的に実施している。
(大妻中野中学校・高等学校)
現在、マスク着用は任意としている体育実技の授業でも不安を感じて外さない生徒がいる。マスクのルール撤廃後も、抵抗を感じる生徒が数多く出ることが予測される。
食事の際の黙食を徹底したため、食事を楽しい時間として過ごすことが出来ていないのが残念。
(関東学院六浦中学校・高等学校)
オンライン学習を導入したため「目が疲れた」と訴えてくる生徒がいた。
部活動や昼休みに運動ができなかったため、運動量の減少とそれに伴う体力の低下もみられた。
外出できないことにストレスを感じている生徒もいた。
マスク規制が緩和されても、マスクを外したがらない生徒が多くいる印象。
(シンガポール日本人学校中学部)

<特別企画> コロナ禍を振り返って ~子どもたちに与えた影響~【後編】

<特別企画> コロナ禍を振り返って ~子どもたちに与えた影響~【後編】

◆進路への影響は?◆

<中学校・高等学校>

高 2・3 年をコロナ禍の環境で過ごした学年は、不安の中でも過去最高の大学進学実績を出した。オンライン授業による思い切った対応(授業数削減、課題量の調整、予習・復習・発展の時間を確保)が、「自己管理力」の成長にも良い影響を及ぼしたようだ。
(大妻中野中学校・高等学校)
シンガポールや日本での隔離期間を考慮して受験日程を設定していた。一時帰国や受験によって卒業式に参加できない生徒もいた。
(シンガポール日本人学校中学部)

◆コロナ禍により生徒さんたちが「失ったもの」「失われがちなもの」とは。◆

<小学校>

「コミュニティ意識」が失われたと感じる。さまざまな学校行事に参加しながら生徒たちは今取り戻している。
(アオバジャパン・インターナショナルスクール)
体験的な活動(校外学習・現地校との交流)で培われたであろう経験・体験が、丸2年ストップしてしまった。
(日本人学校 小学部クレメンティ校)
お互いの表情を読み取ることが難しいがゆえの「意思疎通の力」の低下。トラブルに発展することも。
学級内で一つのものを作り上げる経験ができずに過ごしたため「友だち作り」がうまくできない児童もおり、登校渋りにつながることもあった。
(日本人学校 小学部チャンギ校)

<中学校・高等学校>

中等部は「学校の伝統行事に参加する機会」を、高等部は「修学旅行」や「研修旅行」「(対面の)卒業式」などの行事を行う機会が失われた。
(アオバジャパン・インターナショナルスクール)
オンラインの活動で「与えられる情報」の量が多く整理力による差がつきやすいため、情報を早く適切に整理する力を育成する必要性を感じた。
(大妻中野中学校・高等学校)
国内外で実施される「研修への参加」の機会が失われてしまったことが、一番大きな損失だと感じる
(関東学院六浦中学校・高等学校)
他の人と交流する機会が極端に減ったため、相手の表情を読み取りにくくなった。
理科の授業では人数制限に伴い理科室が使用できない時期があり、実験技能を習得させることが難しいと感じていた。
(シンガポール日本人学校中学部)

◆「ウィズコロナ」の現在、お子さまの様子に変化は?◆

<小学校>

コロナ後はそれまで以上にグループワークの大切さを再認識し、仲間との交流には、興奮もあれば時にはぎこちなさもあるが、すべての経験を通して子どもたちは日々学んでいる。
(アオバジャパン・インターナショナルスクール)
校外での活動がほぼ戻ったことで、子どもたちが生き生きと活動する姿や「みんなでできた」という思いになれる機会が増えた。
授業の中で、オンラインを利用する場面が以前よりも増えた。
(日本人学校 小学部クレメンティ校)
コロナ前は自席で読書などをしていたが、現在は教室内や運動場で元気な声と笑顔が増えた。友達とつながる・かかわることの大切さや楽しさをかみしめているようだ。
(日本人学校 小学部チャンギ校)
 

<中学校・高等学校>

高等部は、現在もオンライン学習にとても適応している。コロナ後も生徒の多くがオンライン学習への参加意欲を維持。
(アオバジャパン・インターナショナルスクール)
新たな教育環境として、オンラインで開催される全国・全世界を相手にディベート、シンポジウム、意見発表会などの交流機会が増えた。生徒のICT活用力と生徒の意欲を発揮できるタイミングが合致したと感じる。
(大妻中野中学校・高等学校)
Chromebookなどの操作はかなり上達したと思われる。
本年度、久々の文化祭では大きなイベント実施のための企画などに慣れておらず不安を感じたが、決められたルールの中で存分に楽しんでいた。
(関東学院六浦中学校・高等学校)
コロナ前と比較してPCなどICTの扱いに“つよく”なった。オンライン上での文化交流でも非常にスムーズに実施することができ、生徒らが率 先して交流を行っていた。
(シンガポール日本人学校中学部)

<特別企画> コロナ禍を振り返って ~子どもたちに与えた影響~【後編】 画像提供:シンガポール日本人学校中学部

ここから出発!
お子さま・ご家庭へのメッセージ

お子さまと一緒に、ご一読ください

アオバジャパン・インターナショナルスクール
<お子さまへ>
「立ち直る力」と「やりぬく力」は教育を通じて育まれ、生徒みなさんをさらなる高みへと導いてくれるでしょう。諦めず、助けを求めることをためらわず、周りのリソースも活用して壁を乗り越え、自分たちを成功に導びいてください。先生たちが支えます!
<保護者の方へ>
子供たちが精神的、感情的、社会的な困難に直面しても、学校や教員は、ご家庭と寄り添い合い、支えとなります。子どもたちが将来の道を自ら切り開いていくことができるように、教育を通して一緒に成長を支援していきましょう。

大妻中野中学校・高等学校
諸橋 隆男 教頭先生
<お子さまへ>
『受験』と聞くと「合格するための勉強」と考えがちです。しかし、受験勉強は入学後に学問に意欲的に取り組むためのものです。入学後に必ず気が付きます。「あの時に勉強したから理解でき、さらに学ぶ意欲が生まれるんだ」と。応援しています。
<保護者の方へ>
「ピンチはチャンス」 受験という機会への不安を、生徒自身・保護者の皆さまがそのように捉えてくださるといいなと心より願っています。

シンガポール日本人学校中学部
グローバル主任 倉田 祥徳先生
<お子さまへ>
Resilience(逆境に立ち向かう力)。コロナにより、培われた力の1つだと思います。新型コロナウイルス感染症による大きな壁を何度も乗り越えてきました。皆さんなら、“Resilience”をもって新たな時代を切り開いてくれることを期待しています
<保護者の方へ>
コロナ禍が過ぎ去り、新たな学校様式へと変化していく真っただ中にあります。生徒が?惑いなく学べるよう全力でサポートしていきたいと思います。

シンガポール日本人学校小学部チャンギ校
杉野 晴彦 教頭先生
<お子さまへ>
これまでの数年間、コロナウイルスの影響で、数々の学校行事が中止になってしまいましたが、大変な時期を乗 り越えた皆さんには、とても大きな力が身についています。何ごとも諦めず、今出来ること、今しか出来ないことを精一杯頑張っていきましょう。
<保護者の方へ>
昨年2022年はようやく「ウィズコロナ」として新しい生活様式が始まりました。学校としましては、今後も学ぶ機会、遊ぶ機会、交流する機会を最大限に作っていくことで、将来の目標を持ち、学び続ける子ども達の成長を支えていきたいと思っております。

関東学院六浦中学校・高等学校
中田 努 教頭先生
<お子さまへ>
中学・高校という十代の貴重な数年間を、新型コロナウィルス感染症の猛威に翻弄されてしまいましたが、いよいよその時間を取り戻す時が訪れます。たくさんの経験を積んで、予測のできない時代の到来に備えてください。
<保護者の方へ>
お子さまがオンライン学習をしていた期間は、ご心労が尽きなかったとお察しします。お子さまがVUCA時代※に求められる人材に成長するためには、既成概念を打ち破る教育が必要だと痛感しています。

※Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)が意味する「将来が予測困難な時代」。

<特別企画> コロナ禍を振り返って ~子どもたちに与えた影響~【後編】 画像提供:大妻中野中学校・高等学校

<特別企画> コロナ禍を振り返って ~子どもたちに与えた影響~【後編】

編集後記

この3年間はコロナ禍により社会や生活様式が様変わりし、私たちにとって変化の大きい年月となりました。前号から2回にわたって、幼稚園や学校の先生方のお話を伺い、子どもたちにとって大きな影響があったことを改めて実感しました。就職活動を控えた学生が「ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)」で語る内容がない現実が報道でも大きく取り上げられていますが、どの学齢のお子さまであっても、影響が大きかったことがわかりました。失ったこともあった一方で、「人と集う」ことの尊さに気づき「逆境をどう乗り越えるか」という、大切な教えを実践する機会でもあったのではないでしょうか。本特集を通じて、コロナ禍の教訓を生かし新たな価値観をも味方にしながら学びを止めない、教育現場の賢明な取り組みを感じていただけましたら幸いです。

 

※2023年1月25日現在の情報です。最新情報は各機関に直接ご確認ください。

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