~サイエンスとの出会い~
英国出身で3児の母としての経験を活かし「子どものための科学プログラム」を主宰するJulieさんのコラムです。
子どもは生まれながらの科学者
3児の母である私が子どものための科学教室を開こうと思ったきっかけは、家庭で繰り広げられる子どもたちの実験です。実験といっても、材料は冷蔵庫や食料棚から勝手に調達されたものばかりで、いろいろなものを混ぜては電子レンジでどう膨らむかを観察するといったものでした。その後の掃除は大変ですから、もうまっぴらだと思う気持ちはありましたが、これこそ子どもたちが生まれながら持っている「興味」に後押しされた「科学者の目」だと気づいたのです。
シンガポールでは小さな子どもたちに家庭教師をつけたり、幼児教室に通わせたりすることが一般的ですが、英国では授業についていけないなどの問題がないかぎり、「子どもの仕事は遊ぶこと」と考える風潮があります。子ども時代を存分に楽しみながら対人関係を築くこと、 大人や同年代の友だちとの関わりの中で自然に語彙を広げ、エチケットを身につけることが英国式なのです。知識を系統的に学ぶシンガポール式と実体験型の英国式のどちらも取り入れられれば理想的だと思います。
科学のはじまりは疑問をもつことから
公園や近所に遊びに出かければ、そこでは子どもなりに問題に出くわします。「何をして遊ぼう?」「どうやって誰と遊ぶ?」という問題を解決するために子どもは頭をフル回転させ、新しいゲームを「発明」したりもします。
また、「ブランコはどうして前に行ったら後ろに戻るのだろう」という疑問から、「もっと早くブランコをこいだら、揺れは大きくなるのかな?」「2 人の重さでブランコをこいだらどうなるのかな?」など新たな疑問がうまれ、実際に試してみて答えを探します。これは立派な「振り子」の実験ですね。
滑り台はどうでしょうか。言うまでもなく、子どもたちは滑り台でも「摩擦」という概念を体験しています。「振り子」や「摩擦」という言葉は知らなくても、彼らは既にその原理を習得しているのです。
幸いにも、シンガポールにはプレイグランドやプールが身近にあります。これらの遊び場がサイエンスの宝庫であることをぜひ覚えておいてください。見わたせば、「てこの原理」「重力」「浮力」「音の伝わり方」「慣性の法則」など、あらゆる現象を遊びの中から学ぶことができるのです。