企業からの声
グローバル時代を迎えた今、 企業が求める人材、教育とは何でしょうか。 企業の方からお話をうかがいました。

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多くの外国籍の方々が日本を訪れ、日本について興味を持ってくださっている今、日本人である私たち一人ひとりが「日本の代表」という気持ちでコミュニケーションをとることが肝要です。
Pasona Singapore Pte. Ltd.(パソナ・シンガポール法人)
森村 美咲(もりむら みさき)氏
2006年株式会社パソナ入社、渋谷区・港区エリア法人営業後、特別法人部門にて外資金融・日系通信業界など大手企業を担当。11年よりパソナシンガポール法人(Pasona Singapore Pte. Ltd.)にて、人材紹介・派遣案件、新規事業エリアの立上げを行い、HRに関するトータルソリューションサービスの提供に従事。22年より現職。プライベートでは10歳児の母。
会社概要
株式会社パソナグループ
1976年創業。「社会の問題点を解決する」という企業理念のもと、誰もが自由に好きな仕事を選択し働く機会を得ることを目指してさまざまな社会インフラを構築。事業内容は、人材派遣・紹介にとどまらず、子育て支援・教育や介護、ライフサポートや地方創生・観光ソリューションなど多岐にわたる。
Q.御社のご紹介をお願いします。
パソナグループは1976年に創業されました。育児を終えてもう一度働きたいと願う主婦の方々が社会に復帰する「きっかけ作り」ができないかと、当時大学生であった創業者 南部靖之が大学ベンチャーとして人材派遣事業を開始したのが始まりです。現在では、グループ会社64社、海外13地域50拠点、約25,000名の社員が活躍しています。社会が直面する課題が多様化する中で、幅広い分野に強みを持つグループ企業の総合力を生かし、人材派遣業の枠を超えて、人々の生活を豊かにするさまざまなサービスを展開しています。今年は創業50周年を迎え、大阪・関西万博にもPASONA NATUREVERSEのパビリオンを出展し、我々にとりましても記念すべき年となります。
海外へは、1984年に業界で初めて香港に海外進出しました。弊社シンガポール拠点も香港の次に歴史が長く、現在ではアジア・北米を中心に世界13地域50拠点を構え、グローバルでフルラインの人材サービスを展開しています。拡大を続ける海外市場において、日本企業の海外進出を支援し、各国で奮闘するマネジメントの方々にとって身近な応援団、信頼できるパートナーとなることを目指しています。具体的には、人材紹介や人材派遣をはじめ、現地法人設立時の人事・労務関連サポート、研修、アウトソーシングサービスなど、幅広い領域で支援を行っています。
Q.兵庫県淡路島で地域活性化に取り組んでいるそうですね。
当社グループでは、2003年より地方が持続的に発展し新たな産業と雇用の創出を目的に、東北・京丹後・岡山・淡路島・琴平など、全国で自治体や地元企業、地域の方々と連携しながら、独自の地方創生事業を展開しています。
創業者の南部が兵庫県出身ということもあり、2020年に淡路島に東京・千代田区の本部で行ってきた本社機能の一部を移転しました。「ウェルビーイング」を提唱し、働く人々の「真に豊かな生き方・働き方」の実現と、グループ全体の事業継続対策の一環と位置付けています。BPOセンターやグループの営業バックオフィス業務の集約、デジタル化を進めながら、業務の効率化も実現しています。社員は地元の方をはじめ、国籍や職域も多岐にわたり、現在は約2,000名の社員が在籍しています。
2017年には「淡路ユースフェデレーション(AYF)」という団体を設立しました。社会の課題解決と地方創生を目的に 、世界何十ヵ国もの国籍の人たちが自分の思いを持って日本に来て学び、やりたいことを「日本で実現する」という起業プログラムにも取り組んでいます。淡路島には「インターナショナルアイランド」構想もあり、ファミリー保育園やインターナショナルスクールに合わせて70名ほどのお子さまが通っています。ウクライナ支援もしており、バレリーナの方をはじめご家庭の受け入れもしています。現在、私はシンガポールにおりますので、日本政府観光局(JNTO)や自治体国際化協会(CLAIR)、日本大使館の方々とコラボレーションをしながら、淡路島への観光誘致にも取り組んでいます。
Q.どのような人材を求めていますか。
海外拠点は各国での採用となりますが、日本での採用は事業の軸が多岐にわたっている現在も、パソナグループとして統一して行っています。30人ほどのグループ採用チームが、事業に合わせ必要とするポジションの採用を行ないます。年齢や性別、国籍や学歴はさまざまです。また、音楽家やアスリートの方々向けに、仕事と音楽・競技活動のダブルキャリアを実現できるような音楽島やスポーツメイトという仕組みを通して採用される社員もいます。
グループ採用の際に学歴は問わず、とにかく「人」を見ています。基本的には基礎学力以外にポテンシャルも含めて優れた才能能力にも注目しており、重視しているのは「PQ」です。これは弊社の造語で、IQはIntelligence Quotient=知性や自分に秘めた才能、EQはEmotional Intelligence Quotient=優しさや思いやり、SQはSpirit Quotient=向上心があり挑戦しようという実行力 と捉え、我々はこの3つをあわせて「PQ(Personal Quotient)=パーソナリティ=人格」とよんでいます。創業当時から現在のように事業の軸が広がったのも、「PQ」が優れた人材が集まったからに他なりません。
我々が求めている人材像は、例えば、普段とは異なる環境に足を踏み入れたとします。そのような時に、やれない理由を考えるよりまずはやってみる。どうしたらできるのかを考える人です。また、失敗した時には、人や環境のせいにせず、どんな時でも自分を振り返り顧みることができる人です。弊社の仕事は「人を活かすこと」すなわちライフプロデュースで、提供するサービズの多くは目に見えないため、私たち一人ひとりがパソナの商品という自覚を持ち、自分たちが会社の代表だと思って行動をしてほしいという共通認識があるのです。
外国籍人材の活用にも力を入れています。当社グループでは、47ヵ国、約1,000名の外国籍の従業員が国内外で活躍しており、管理職における外国籍人材の割合は0.6%(海外連結子会社を含む場合は7.6%)です。多様な国籍の人材を適材適所に配属・登用することで、事業における変化への対応力、新たな発想にも繋がっていると確信しています。
Q.女性の活躍について教えてください。
創業当時より全員が総合職として入社し、男女の隔たりのない人材育成や配置を実践してきました。出産、子育て、介護などのライフステージの節目においても従業員が活躍できるよう、1990年代より「在宅勤務」「短時間勤務」「フレックスタイム」などの柔軟な勤務制度を整備しています。従業員全体に占める女性の割合は54.4%、全管理職に占める女性の管理職の割合は47.8%、取締役及び執行役員に占める女性の割合は28.0%と、多数の女性管理職・女性役員を輩出しています。制度面だけでなく設備でも現在、南青山オフィス内に事業所内保育所を設置し、兵庫県淡路島のパソナファミリーオフィスでは従業員が子どもと同じ空間で働ける環境を整備するなど、働きやすい環境も整備しているのです。
このような取り組みが評価され、2024年には、「Forbes JAPAN WOMEN AWARD※ 2024」で、弊社グループがついに1位に輝きました。これまでの取り組みを高く評価いただけたことは、私たちにとって大きな自信となりました。
※企業の成長を見据えた女性の活躍推進を応援する、日本最大級の女性アワード
女性の活躍が進んでいるものの、海外駐在はまだまだ男性の方が多いのが実情です。シンガポールでも、配偶者の海外赴任に伴い、自身のキャリアを中断して帯同する女性は少なくありません。そこでシンガポールから日本に打診し、「リターニー・キャリアプログラム」をスタートしました。現地で働きたくても叶わない方、また本帰国後は再び仕事に就こうとしている方向けに「ブリッジ」を作り、海外にいる間もスキルアップできる機会の提供や日本からオンラインでのキャリアカウンセリングを実施するなどの支援を提供しています。
Q.御社にとってグローバル人材とは。
違う価値観に触れた時に「違う」と感じながらも、理解し柔軟に受け入れる適応力を持つことは大事だと感じます。「人材紹介」の観点から言うと、まず国籍が日本であれば日本人であるという事実は変えることができません。当然、周囲からも日本人として見られるため、日本語力はもちろん、日本の歴史や文化・慣習などを理解し、一人ひとりが「日本の代表」という気持ちでいることが肝要です。多くの外国籍の方々が日本を訪れ、日本について興味を持ってくださっている今、自国についての正しい情報を理解し、発信できることは大切だと考えています。そのうえで、英語などの語学力を身につけることは、相手の文化を尊重しながら自分の考えも伝えていくための大切な手段だと思います。
Q.海外で暮らすご家庭にメッセージをお願いします。
私自身も子育て中なので、「一生に頑張りましょう」という気持ちでおります。子育てにおいて、親の影響ほど大きいものはないと感じます。それゆえ、まずは親御さんご自身が、子どもの前で楽しそうにしている、笑っていることを大切にしていただきたいと思います。親子は鏡のような関係であると思います。親御さんが目の前で楽しそうに生きていることで良いお手本となり、子どもが「早く大人になりたい」「働くって楽しそう」と感じたら素敵ではないでしょうか。
人はどうしても周囲と比較してしまうところがあります。それは会社でも同じです。しかし、周りの誰かと比較するよりも、自分が先月できなかったことが今月はできるようになった、という点に注力する方が向上的で、良いパフォーマンスにつながるものです。
シンガポールは、多国籍多民族の国でいろいろなバックグラウンドの人がいます。この稀有な環境を最大限生かし、積極的に「人」と出会い新しい経験をしてください。学業で忙しく遊ぶ機会がないというお話を聞くことがありますが、限られているからこそ、この有限の時間を思い切り楽しんでいただきたいと思います。