インター校時代の楽しい思い出
小学校1年生の時に日本からシンガポールに引っ越した私は、「せっかくの海外生活なのでインター校を経験してみては」という両親のすすめもあり、インターに転入しました。渡航前にアルファベットだけは書けるように練習しましたが、英語の知識はその程度でした。
インターに通い始めた当初は、先生や友達がとても優しく接してくれましたが、言われていることが理解できず、自分の考えを伝えることもできず、悔しい思いをしたのを覚えています。その後学校で英語漬けの日々が始まり、家でも母と一緒に英語の絵本を読んだりして、英語の力は順調に伸びたように思います。英語が話せるようになってからは、フィクション・ノンフィクションともに本を沢山読みました。帰国後の今も続けています。
インターの授業で思い出に残っているのは、IBのPYPプログラムの一環で行われる、「Unit of Inquiry」という授業です。課題のテーマについて自分でリサーチをして、調べた内容を論理的にレポートにまとめ、学校全体に伝えるものです。プロセスは大変ですが、テーマを深く理解でき、自分自身の知的好奇心が大いに満たされました。
インター校に通いながら、日系の塾にも通っていました。入塾当初は、中学受験は意識しておらず、いずれ帰国する日本で困らないように、理社も含めて4教科、高いレベルで学習することを目標にしていました。結果的には理社を勉強することで日本語力もついたと感じています。インター校の先生が英語だけでなく母語を大切にするように励ましてくれたこと、塾の先生がいつも寄り添ってくださったことが大変有り難かったです。塾の他には、ピアノやそろばんを習っていましたが、何といっても、住んでいたコンドミニアムのプールやプレイグラウンドで毎日遊んだのが、楽しい思い出です。
帰国後、中学受験へ
本帰国の時期はある程度予想していたので大きなショックはありませんでしたが、日本での記憶があまり無かったので、帰るというよりも、どこか北の方の別の国に行く、という感覚でした。
帰国して通い始めた公立の小学校では、みな親切でしたが、「皆が平等であること」を重んじる学校の考え方には違和感を覚えました。帰国後も中学受験に向けて塾に通い、6年生の夏休みや週末は、一日10時間以上は勉強する日々でした。志望校を桜蔭にしたのは、進学後も勉強がしたいと思ったことが最大の理由です。
中学入学後は帰国生対応の英語クラスが学校にないため、学校外の帰国生向けの教室や、海外進学のためのセミナーなどに参加して、外に目を向けつつ、英語を保持・向上させることに努めています。将来の夢はまだ模索中ですが、最近プログラミングを始めたので、IT関係の仕事に加え、数式で表すことのできる世界の奥深さにも興味を持っています。
また、いずれかの段階で、海外にはかかわっていきたいと思っています。
毎日を全力で楽しむ
今思うと、インター校では先生が生徒を一人の人間として尊重してくれ、かつ非常に自由な雰囲気でした。生徒の側にも常に責任があり、自律の精神が身についたと感じます。また、さまざまな国籍の友だちから文化の違いや価値観の違いを学び、「人と違っていて良い」と思えるようになったこと、そして自分と異質なものや人に対する抵抗感が全くなくなったことは、とても貴重な経験でした。
実際に暮らしている時には気づかないかもしれませんが、シンガポール生活の中から得られるものはとても貴重です。そこでしかできない経験や知識をできるだけ吸収して、毎日を全力で楽しむことが大切だと思います。目の前の事から逃げずに、日々努力を続ければ結果はあとからついてきますし、他では得難い人生経験が蓄積されていくと感じます。
お母さまより
シンガポールに滞在した5年間は、娘の一生を左右するものになりました。多国籍の環境で、「周りと違う」ことが当たり前でしたから、親である私自身が、娘たちを他のお子さんと比べることが全くなくなりました。これは帰国後もそうです。このことは、親としてのシンガポール生活最大の実りだったように思います。
シンガポールに滞在できたこと、そしてそこで出会った沢山の方たちに、心から感謝しています。今いらっしゃる皆さまは、どうか毎日を大切にお過ごしください。
『海外生の今』バックナンバー
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