企業からの声
グローバル時代を迎えた今、 企業が求める人材、教育とは何でしょうか。 企業の方からお話をうかがいました。

AIは金融機関や企業の競争環境を左右する 重要なファクターになるという認識のもと、 さまざまな取り組みを進めています。
これからは、AIリテラシーの高い人材が求められる一方で、私たちが採用するのはあくまで「人間」です。だからこそ、人間にしかできない領域によりスポットライトが当たっていくのではないでしょうか。
三菱UFJ信託銀行株式会社 シンガポール支店 支店長
梅谷 賢三(うめたに けんぞう)氏
1996年 慶應義塾大学経済学部卒業、三菱信託銀行(現 三菱UFJ信託銀行)入社。2014年 海外投資家営業部 主任調査役、19年 運用商品開発部 次長などを経て、24年より現職。
会社概要
三菱UFJ信託銀行 株式会社
1927年設立の日本を代表する信託銀行であり、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の中核企業。銀行業務に加え、資産運用・資産管理、不動産、相続・遺言、年金、証券代行など、信託銀行ならではの高度な専門性を生かした幅広い金融サービスを提供。国内53拠点、海外5拠点を展開。2027年には創立100周年を迎える。
Q.貴社のご紹介をお願いします。
三菱UFJ信託銀行は、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の傘下・中核会社の一社である信託銀行です。当社の特徴は、信託機能をベースとした「資産運用」「資産管理」、あるいは「不動産」「年金」「証券代行」といった幅広い領域で専門的な金融サービスをご提供している点にあります。2027年には創立100周年を迎える歴史のある会社ですので、現在社内でもさまざまな記念イベントの準備を進めているところです。
現在、シンガポール支店では主に「資金証券業務(トレジャリー)」と「ファンドファイナンス業務」の2つのビジネスを行っています。「資金証券業務」では、インターバンクマーケットで資金を調達し、さまざまな運用を通じて収益を獲得するとともに、資金調達・運用に伴う銀行のバランスシートを適切に管理しています。「ファンドファイナンス業務」は、ファンド向けの貸し出し業務です。当社が強みとする「資産管理業務(インベスターサービス業務)」では、ファンド資産の管理や価値計算などを担っていますが、当店では、そうしたファンド運営ビジネスを資金繰りの観点からサポートするための資金を提供しています。
Q.どのような人材を求めていますか。
専攻分野、性別、国籍といった属性に捉われず、「多様な人材」を求めています。ひと昔前は「銀行=文系」というイメージがあったかもしれませんが、現在は専攻分野に関わらず活躍の場が数多くあります。
また、近年はキャリア採用も増えており、新卒一括採用・終身雇用という世界ではなくなってきています。当社は幅広い専門性が求められるため、相当にご経験をお持ちのプロフェッショナルもキャリア入社しています。近年は海外での新卒採用も始めており、国際色豊かな方が入社してくれています。皆さんのように、海外経験を生かして活躍できるフィールドは十分にあると思います。
Q.AIの普及によって、金融業界で求められる人材も徐々に変わってきていますか。
当社全体として、AIを業務に取り込むことには非常に力を入れています。AIは単なる効率化ツールに留まらず、金融機関や企業の競争環境を左右する重要なファクターになるという認識のもと、さまざまな取り組みを進めています。これからは、AIリテラシーの高い人材が求められる一方で、私たちが採用するのはあくまで「人間」です。だからこそ、人間にしかできない領域によりスポットライトが当たっていくのではないでしょうか。例えば、対人関係を築く力、信頼関係、誠実さなどは、人間同士だからこそ成り立つものです。
AIは大量のデータを読み込み、素早く回答を出すことができます。しかし、その背景を理解し出てきた情報を自分なりに読み解き、そこから想像力を働かせることは、人間ならではの力です。AIを単なるツールとして使うだけではなく、その背景まで理解しながら仕事を進める「読み解く力」やお客さまとの関係を築き、提案していく力がこれからますます重要になると思います。
Q.この10年間の中で、求められる人材はどのように変化しましたか。
三菱UFJ信託銀行はグローバル化が進展しています。ここ10年ほどの間にも海外企業の買収などを進め、グループ全体で見ると、従業員の半分近くが海外の方になっています。そのため、求められる人材も、グローバルな環境に対応できる人へと変化しています。また、かつての「手堅い銀行員」というイメージから、時代の変化に柔軟に対応し、挑戦し、イノベーションを起こしてビジネスを巻き込んでいくような、自由な発想を持つ人材が求められるようになりました。本店では、スーツにネクタイではなく、Tシャツにジーンズで仕事をしている社員もいます。以前なら、そのような服装で働くなど全く想像しませんでした。世の中と同様に、会社も柔軟になってきたと感じます。
また、組織における女性の活躍推進についても、女性ラインマネジメント比率などの具体的な数値目標を掲げて取り組んでいます。妊娠・出産・育児休業、そして復職後の働き方を手厚くサポートする各種制度が実効性をもって運用されており、ライフイベントと仕事を両立しながら長くキャリアを築き上げる社員が当たり前の存在となっています。
一方で変わらない部分として、私たちは信託銀行ですので「フィデューシャリー・デューティー※」を非常に大切にしています。全社員が受託者としての責任を果たし、お客さまと社会に貢献する。信頼、誠実、お客さま本位、社会貢献という基本的な価値観は、10年前も今も変わりませんし、これからも変わるものではないと思います。
※受託者責任であり、人間性、専門性およびお客さま最適・最善のために行動する力。
Q.多国籍・多文化のスタッフをマネジメントなさる上でのポイントや心がけていることは。
シンガポール支店全体では従業員数が70名弱で、そのうち50名超がローカルスタッフです。マネジメントのポイントとしては、「自分が慣れ親しんできた日本とは違うのだ」という前提を常に置いています。暗黙の了解をなるべくなくし、自分の言葉で明確かつオープンに対話することを心がけています。また、シンガポールは多様な方々によって支えられる国家ですので、リスペクトを持って接するコミュニケーションを常に意識しています。
シンガポールは、今なお次々とビルが建ち、人に活気があり、成長のダイナミズムを肌で感じます。アジア周辺諸国へ行っても同様に成長を実感しますし、特に、他社の方と話をしているとインドへの注目を強く感じます。そうした成長ポテンシャルを日々体感しながら業務に取り組めるのは大きなやりがいです。
Q.日系企業としてのアイデンティティや、大切にしている価値観は。
ローカルスタッフと話をしていると、日系企業や日本人に対して「Polite(丁寧・礼儀正しい)」という言葉をよく聞きます。このPoliteの背景には、単なるマナーだけでなく、誠実さや信頼構築、中長期的な目線といった要素が含まれていると感じます。日系企業として、そして日系の信託銀行として、誠実さや信頼関係、フィデューシャリー・デューティーを大切にすることが私どものアイデンティティだと思っています。業務では一方的な言い方にならないよう注意しながら、「日系企業だけれども、主役はローカルスタッフの皆さんですよ」という伝え方をしています。また、定期的なタウンホールミーティングなどでも、本社のメッセージや目指す方向性を、自分の言葉で発信・共有するようにしています。
私たちの強みは、仕事の丁寧さや本店を含むチームワーク、信頼関係の構築力です。その一方で、業務がサイロ化しがちな面もあるため、国籍や部署の垣根を越えて積極的にコミュニケーションを取っていくと、より素晴らしい活躍ができると感じます。
シンガポール政府がガイドラインを出し柔軟な働き方を尊重する中で、当店でも現場に判断を委ね、在宅勤務と出社を柔軟に組み合わせる運用をしていますが、ローカルスタッフが極めて真面目に仕事をしてくれていることに感心しています。シンガポール全体が非常に「実践的・合理的」であり、限られた天然資源や国土条件のもとで持続的に発展するための戦略や多様性を前提とした社会づくりなど、日本が参考にできる点が多々あります。
Q.これからの時代に求められる「グローバル人材」に必要なスキルは。
語学力はもちろんのこと、文化的背景も含む「他者への理解」や「専門性」をバランス良く持つことが大切です。専門性があってこそお客さまの期待に応えることができ、その土台の上に異文化理解や語学力が追加されることで、グローバル人材として活躍の場が広がるのだと思います。
専門性は学生時代に無理に完成させる必要はなく、入社後に業務を通じて磨かれていくものです。学生のうちに取り組んでおくと良いものとしては、不動産や法律、会計などの基礎的な知識を学ぶこと、若いうちからの英語学習、そして何より母語である日本語を大切にし、深く学ぶことを挙げたいと思います。特に日本人として、日本語で深く論理的に思考・表現できる力があってこそ、外国語でも深い対話が可能になると感じます。日本語の教養と思考力を身につけた上で英語力を磨くことが大切でしょう。
Q.海外在住のご家族へのメッセージをお願いします。
海外という異なる環境でお仕事をし、子育てをされているご家族みなさまへ「大変お疲れさまです」とお伝えしたいです。ご家庭で金融や投資の素養を身につけるためには、いきなり難解なお金の話をする必要はありません。まずは日頃から世界のニュースに触れ、親子で「これってどういうことなんだろう?」「どう思う?」と会話を重ねることが第一歩になります。ニュースを題材にした日常の会話が、経済や金融、投資に興味を持つ素晴らしいきっかけになるのではないでしょうか。
2026年9月25日現在の情報です。最新情報は直接お問い合わせください。

























