
学習塾KOMABA
吉信 望美 国語科主任
日常会話ができる落とし穴
シンガポールで子どもたちに国語を教えていると、日常会話には支障がなくても、読解や作文では年齢相応の言語力に届いていないと感じる場面がよくあります。これは、情報を読み取って整理したり、自分の考えを筋道立てて話したり書いたりする際に、口語的な表現しか身についておらず、表現力が幼い水準にとどまっていることが原因です。
幼児期や小学生の時期を海外で過ごす子どもたちは、日常生活の中で複数の言語に触れています。シンガポールでも、学校では英語、家庭では日本語を使う環境は珍しくありません。日常会話に問題がないと見過ごされがちですが、教育現場では「話す日本語」と「学習言語としての日本語」が必ずしも同じ水準にあるとは限りません。
「感情を表現する力」の重要性
言語の成長において特に重要なのは、「感情を表現する力」です。「嬉しい」「悲しい」といった基本的なものだけでなく、「誇らしい」「戸惑う」など、細かな感情の違いを表す語彙をどれだけ使いこなせるかによって、文章の読み取りや表現の深まりに大きな差が生まれます。例えば文章読解では、学年が上がるにつれて抽象的な内容を理解する力や理由を説明する力が求められます。「筆者は何を伝えたいのか」「なぜそう考えたのか」と問われたとき、自分の考えを言葉にできず戸惑う子どもがいます。「感情を表現する力」は、学習面だけでなく、自分の気持ちを伝える心の成長にも深く関わっています。
日本語との関わり方
では、日頃どのように日本語に触れていけば良いのでしょうか。第一に、読書習慣をつけることです。読書習慣がある子どもは語彙が豊かになるだけでなく、場面を想像する力や自分の考えを広げる力も育ちます。第二に、親や友人との会話を大切にすることです。さまざまな対話の機会は、相手の話を聞き他者を理解する力を養うことにつながります。
グローバル社会では、英語力を伸ばすことはもちろん大切です。しかし、母語を日本語として育つ子どもにとって、日本語での「聞く力」「読解力」「思考力」「表現力」を育てることも欠かせません。海外で育つ子どもたちだからこそ、母語を単なる会話の手段ではなく、自分を支える語彙と思考の土台として育てていく必要があります。私はその思いを胸に、日々教室で子どもたちと向き合っています。

2026年9月25日現在の情報です。最新情報は直接お問い合わせください。





















